企業インタビュー

JVCケンウッド/JVCケンウッド山形 インタビュー

2019年11月19日

JVCケンウッド SCM部 生産戦略グループ 伊藤様、佐藤様とJVCケンウッド山形 技術部 斎藤様の3名にインタビューをしました。

JVCケンウッド SCM部 生産戦略グループ グループ長 伊藤 様 参事 佐藤 様

JVCケンウッド山形 技術部 部長 斎藤 様

※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時

JVCケンウッド/JVCケンウッド山形
目次

社内での立場と役割とは

まずは、社内でのお立場と役割からお聞かせください。

伊藤 私と佐藤はコーポレート部門のSCM(サプライチェーンマネジメント)部にある生産戦略グループに所属しています。
サプライチェーン全体にかかわり、生産拠点の効率的な運営を考える部門です。

生産系、管理系、技術職系の職をずっと担当されてきたのですか。

佐藤 私はオートモーティブ分野の生産技術を担当してからこちらにきました。

サプライチェーンマネジメント部の主な領域は生産領域だと思いますが、例えば生産計画や全社の事業的な部分、教育に携わられているという認識で間違いありませんか。

伊藤 基本的に事業の運営は各分野や事業部門が進めています。私たちはコーポレート部門としてサポート的な立場です。
教育については職種別の研修体系を補うために、私たちの部署でサポートをしています。

斎藤さんはいかがでしょうか。

斎藤 私はJVCケンウッド山形で技術部に所属しています。
JVCケンウッド山形は、JVCケンウッドグループの関連会社で、無線機と音響システムを生産しています。設計から生産技術、調達、生産管理、出荷に至るまでの一連の機能を持つ工場です。
技術者としては設計と生産技術の2つがあり、全体で50人おります。このうち、生産技術は30人強というところです。

工場のラインではこの製品に何人という形で生産技術者が割り振られているのでしょうか。

斎藤 山形の工場で生産するものはすべて、生産技術がフォローしています。
さらに、マレーシアにも無線機の工場があり、新規性の高いモデルについて私たち山形の生産技術がサポートしているところです。

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合併後のCPE導入の経緯とは

JVCケンウッドの合併当時や、合併後の生産技術者の様子について教えてください。

伊藤 当社は2008年10月に経営統合し、当初はホールディングスの下で事業会社ごとにそれぞれの事業を進めていましたが、2011年に完全に一つの会社になりました。
現在、モノづくり全体を見直そうという機運が高まっていますので生産技術の役割の見直しなどに取り組む好機だと思っています。

改めて強化を図る機運が出てきたということですね。

斎藤 山形に関しても、事業の変化点がいくつかありました。
量産移行するモデルの変化、海外拠点への生産移管などがあり、生産技術部門も状況にあわせてリソース増減に対応してきました。

生産技術者の教育としては、どういう取り組みをしてきましたか。

伊藤 以前、それぞれの会社のときは各々の教育体系があったのですが、合併とともにそれが薄れていきました。
全社的な連携強化や、横串を刺す活動の中で、いろいろな課題を挙げてみたところ、生産技術者の育成が必要ということがわかってきました。
事業や製品に合った教育というのは、それぞれの部門でやるべきだと思っていましたが、生産技術者の教育をどうすべきか考えていた際に、日本能率協会にCPEがあることを思い出したのです。
読んでみると、この本は生産技術者が認識すべき範囲を網羅していると思いました。
管理者、生産技術者としてどんなことを認識し、守備範囲にしておくべきかをまとめたものは、他になかなかありません。
そこで全社で活用するのに非常に良いテキストになると思い、2、3年前から活用しています。

ガイドの中でも、生産戦略ガイドは特に良いことが書いてあると評価していただきましたね。どのような点が良かったでしょうか。

伊藤 当社グループはマザー工場、マザー機能をどの部門が担うのか、再考が必要と考えています。
生産戦略ガイドの基本的な部分が納得がいく分かり易い内容でしたから、社内のプレゼンでもガイドに出てくる言葉を使用させていただきました。
こういう概論があれば、自社で応用するときにとても役立ちます。
当社としては非常に参考になりました。

3年前からCPEを導入開始されたとのことですが、CPEを知ったきっかけは何だったのでしょうか。

伊藤 私はこの部署に来た10年ぐらい前に日本能率協会のものづくり大会に参加させていただきました。
時間が空いたときにいろいろなチラシを眺めていて、その中からCPEを見つけました。
生産技術者の資格制度は聞いたことがなかったので、こういうものがあるのかと驚いた記憶があります。
なので、CPEの存在を知ったのは10年ぐらい前なのです。

カンファレンス会場で知っていただくというのは珍しいと思います。
佐藤さんはいかがでしょうか。

佐藤 私は生産技術部会の事務局を担当していますが、教育の課題が持ち上がった際、JVCケンウッド山形の斎藤さんからCPEをすでに活用していることを教えてもらいました。初めて知ったのはそのときです。

生産技術部会というのは全社の組織ですか。

佐藤 はい、生産技術に関する情報や課題を全社で共有する目的の会議体です。

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山形でのCPE先行導入、最初に感じたこととは

本社に先立って、斎藤さんがJVCケンウッド山形で既にCPEを導入されていたというのは、非常に興味深いです。

斎藤 もう10年ぐらい前でしょうか、私がCPEを受けたのは確か2010年だったと思います。当時の上司からCPEの事を聞き、「受けてみないか」と勧められたのがきっかけでした。
2年ほど、品質保証部門も経験しながら、入社からかれこれ28~29年、生産技術部門で働いてきました。
自分のスキルがどの程度なのか、興味があったので、受けてみました。
私たちが実際にやっていた生産技術の範囲が非常に狭く、こんなことでは世の中に通用しないという思いを持ちました。
以来、私たちの部署では毎年教育訓練の予算をもらって受験しています。

CPE資格制度が始まったのは2009年です。
山形では2010年の段階でその情報を入手していただき、受験をスタートさせていたのですね。

斎藤 そうです。とにかく、出題範囲がとても広かったのに苦労しましたが、非常に体系だった生産技術の学習ができました。

ご自身がCPEを勉強してみて良いと思った部分、抵抗を感じた部分はどこにありましたか。

斎藤 まず、抵抗を感じた部分からお話しします。 とにかく生産技術者に求められるスキルの範囲が広いことです。私たちが現場で進めていたことが全体のごく一部でしかありません。範囲が広いうえにスキルの数も多かったので、少し抵抗を覚えました。

生産技術者としてのキャリアの中であまり触れてこなかった領域はありましたか。

斎藤 例えば調達です。金型もそうです。
プロセスもオペレーションだけでなく、イノベーション的なものが求められます。まさにものづくりの要の業務、ポジションだということをCPEの学習を通じて痛感しました。

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資格取得で変わった点とは

資格を取得して何か変化はありましたでしょうか。

斎藤 以前はモノづくりのプロセスの中で試作フェーズ辺りから生産技術者が入っていたのですが、フロントローディングやコンカレントエンジニアリングの考え方をみんなで共有し、もっと前の段階から入るようにしました。
その思いがみんなに浸透したといえる状態には至っていませんが、少しずつ変化の兆しが見えるようになってきたと思っています。
機種やモデル単体での効果改善もこれまで、非常に狭い範囲で進めてきました。
しかし、より大きな視点で見るようにしようという話し合いをしています。
ものづくりの考え方が変化してきている点は、CPE学習の一つの成果ではないでしょうか。

CPE資格取得者で、海外勤務や海外に携わっている方はいらっしゃいますか。

斎藤 CPE資格取得後、山形の拠点からマレーシアに出向した人もいます。
今は帰任していますね。

マレーシアではどういうふうに活躍されたのでしょうか。

斎藤 生産技術のスキルを高めるためのマネジメント的なポジションで行きました。

それによって、日本側にもつながってくる変化や新しい成果はありましたか。

斎藤 日本で構築したプロセスや考え方を現地に浸透させることが目的でした。
山形のものづくりルールを標準化し、海外へ展開していくことは私たちのミッションとして捉えています。

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現在の資格導入状況、進め方とは

2010年の導入開始以降、JVCケンウッド山形におけるCPEの現在の状況について教えてください。

斎藤 当社ではこの教材を使い、教育訓練の一環で生産技術のスキルを高めています。 資格の取得者は2018年度末現在で5人に増えました。 管理者レベルの人から徐々にこの資格を取得するために勉強してもらっているところです。 私が2010年に取得したあと、自分なりに得た知識を教育資料にまとめ、生産技術メンバーに説明したことがありました。それが継承できているかというと、そうでない部分も確かにあります。

勉強会をされたりしているのでしょうか。

斎藤 そうですね。
これからの生産技術としての取組むべき内容を資料にまとめ、説明してきました。

皆さんは受験に向けてどれくらいの時間をかけて勉強していますか。

伊藤 コーポレートとしては1年単位で翌年の受験希望者を募っています。

斎藤 山形も同じで1年スパンです。
予算をつけて「来年度は君が受けてみないか」と声掛けもしています。
1年スパンでエントリーしたあと、最初はテキストをパラパラと見て、試験が迫ってくると集中的に勉強しているようです。

伊藤 受験した人にアンケートを取ると、勉強期間は大体1、2カ月です。

佐藤 勉強する期間は短期で集中してやっている感じですね。

伊藤 初めて本を開いたところからカウントすると、もっと長くなるのでしょうが、実際に集中して勉強している期間は1カ月から2カ月というところです。

CPE受験者募集の流れとしては、本社コーポレートから関係会社に対し「来年は何人受けますか」という形で話を持って行っているのでしょうか。

伊藤 そうです。そのように案内しています。

対象となる関係会社はどれくらいありますか。

伊藤 国内だと山形、長岡、長野、JKCMで、会社単位にすると4生産子会社になります。

応募者は集まってくるものでしょうか。

佐藤 コーポレートから「2人ぐらい出していただけますか」という聞き方をしますので、大体2人ずつ集まります。

その話が来たら2人ずつぐらい出しているわけですね。

佐藤 はい。将来のリーダー、マネージャー候補、海外勤務を経験させたい人を優先してもらっています。
受験した人を対象としたアンケートでは、「マネージャーやリーダー以上は全員が知るべき内容で、非常に有意義だ」という声がほとんどでした。
全員が受けるのはまだ先ですが、本年度が終われば各分野に資格取得者が3人以上いる体制ができ、議論がよりいっそう活発になると期待しています。

CPEの資格取得者が各分野に3人ずついれば、共通言語でしゃべれますね。

佐藤 そうですね、1つの組織に1人の資格保有者ではどうにもなりませんし、2人でもちょっと厳しいでしょう。

同じ学習体験した人たちで業務改善を話し合うわけですよね。

佐藤 受験する人にはテキストをこちらで購入して渡しています。
私たちも受験経験者でアンダーラインを引いたり、折り曲げたりするなど、テキストを汚しながら覚えました。同じ体験をこれから受験する人たちにしてもらいたいのです。

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組織としての次なる課題とは

CPE資格取得が進んでいく中で、組織としての次の課題を教えてください。

伊藤 組織としてモノづくりのコストを改善するレベルには来ていますが、まだコストを開発する段階には至っていません。
もっと前の段階から設計に注文をつけたり、使用する生産設備を絞ったりするなどしているのですが、まだ不十分ということから、製品のライフサイクルを開発からそのモデルがエンドオブライフの形になるまでととらえ、トータルコストで考えていこうとしています。
そこで、製品の開発から生産終了までのトータル原価を把握しようとするプロジェクトも進めています。
モノづくりの生産性だけを取り上げるのではなく、そこに行き着くまでの過程で自分たちが思う以上のロスが出ています。
モノづくりをより広い視点で見て、見方や考え方を従業員全体で変えていこうとするプロジェクトなのです。
その議論の中でも「生産技術の業務範囲はそれだけではない」という話がよく出ます。
私たちはプロジェクトが始まる前にCPE学習でそのことを知っていたので、確かにそうだと感じていました。

佐藤 生産技術の基礎を学びながら、プロジェクトを通してモノづくりマインド改革も進めています。 共通知識を持って、次の課題に向けた議論を皆で深めていく上でも、CPE資格取得は役に立っているといえそうです。

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生産技術を幅広く学ぶことの意義とは

生産技術者の求められる役割が年々高度化していることもあって、日本能率協会では2019年度から、CPEの資格制度を見直します。
従来はCPEとCPE-ME(マネジメントエキスパート)の2つを展開していましたが、CPEはCPE-B級へ、さらにCPE-MEが本年度から新たにCPE-A級に変わります。
CPE-MEでは開発部門との連携や経営視点からの生産戦略に特化しており、生産技術部門の基礎知識のみであったCPE(現在のCPE-B級)と学習範囲を切り分けていましたが、それらを統合してより広く勉強してもらい、同時にマネジメントの視点を持ってもらうのが大きな狙いです。
上位資格であるCPE-A級に対し、何かお考えやご意見があれば教えて頂けますでしょうか。

伊藤 当社グループとしては複数の生産拠点を持つ中、それをどう効果的に運用できるかが大事で、生産戦略の知識が必要になってくると思います。
そこをしっかりと網羅したガイドブックなので、知っておくべきでしょう。必要な知識だと思います。
A級を目指して勉強すべきでしょう。そういう目標がないと、自分のものとして読み込むのが難しい感じがします。
当社もB級が始まったところですが、A級の受験も検討していこうと思います。
私も質問してもよろしいですか。

もちろんです。

伊藤 今までCPEを受けた人はCPE-MEの受験資格がありました。
今はBを受けた人がAの資格があります。
以前にCPEに受かった人はA級の受験資格があると考えて良いのですか。

はい、以前取得されたCPEと、現在のCPE-B級は同じ扱いをしています。
CPEをこれから導入するかどうかで悩んでいる企業があると思います。
そういった企業向けに御社から何かアドバイスをいただけますでしょうか。

伊藤 私が知る限り、生産技術の役割範囲を体系立ててまとめている本は見たことがありません。
生産、特に生産技術に携わる人は知っておくべき内容だと思います。

佐藤 私も生産技術の一員とはいえ、どちらかというと設備開発や生産ライン設計の方が詳しいのですが、こういう勉強をすると役割の広さをあらためて理解できます。
ある部分は専門性が高く、その他の部分は浅く広く知っている人をT型人間といいますが、T型人間の生産技術者には欠かせない知識だと思います。

斎藤 生産技術に対する考え方は人それぞれが自分なりの物差しを持っているはずです。
そういう考えを持ちながらこのテキストを勉強していくと、「えっ、そうなの」と驚かされるところが出てきます。
自分の考えを持ちながら、そのギャップを埋めるようにしていけば、知識がより自分のものになると思います。

ありがとうございました。

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