2017年10月23日
日本電気 ものづくり統括本部 エキスパート 黒羽 昇一 様に、2017年7月期CPE資格試験最高得点者としてインタビューしました。
ものづくり統括本部 エキスパート 黒羽 昇一 様
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
本日は日本電気ものづくり統括本部エキスパートの黒羽昇一さんにお話をうかがいます。
2017年7月期のCPE資格試験の最高得点者ということで、インタビューをお願いしました。
合格おめでとうございます。
資格のお話しの前に、黒羽さんの現在の業務についてお聞かせください。
黒羽
ものづくり統括本部では、ハードウェア製品の開発、生産に関係するサプライチェーンの強化、向上などを受け持っています。
このため、生産技術力の向上やベースを支える開発基盤、生産基盤、物流の強化に貢献する役割も担っており、私自身は生産基盤強化が主な担当です。
当社は現在、複数ある生産工場の仕組み(IT/業務プロセス)の統合を進めています。
現状は、各生産工場が親事業部・製品に特化した仕組みで活動をしています。
しかし、ハードウェア製品の生産形態が、大量生産から多品種少量生産にシフトしている現状では融通が利きません。
どの生産工場でも同じように構えておくことで、生産工場全体でばらつきを吸収していく、いわば個別最適から全体最適に持っていこうという考えです。
そのために各工場の仕組みを統合化していこうとしています。仕組みの統合としては業務プロセスの統合とITの統合がありますが、私はITを主に担当しています。
お役職はエキスパートとなっていますが、チームでプロジェクトを進めているのでしょうか。
黒羽
そうです、プロジェクトチームです。
ものづくり統括本部では現場に入り込んで一緒に活動することが多いですが、その場合はプロジェクトでの活動形式をとるケースもあります。
今はNECプラットフォームズで基盤導入を推進していますが、ITはNECマネジメントパートナーにて当社システムを集中して主管する分担となっており、そのNECマネジメントパートナーに出向という形で参画をしています。
お話しを伺って、幅広く事業を掌握していないと進められない分野のように感じました。
ITを中心に担当しているということですが、このタイミングでCPE資格試験を受験されたことについてお聞きしたいと思います。
そもそもCPE資格試験を知ったきっかけはどこにありましたか。
黒羽
上司から「受けてみないか」と紹介されたのが最初です。
申し訳ないのですが、それまでは知りませんでした(笑)。
貴社はCPE資格の受験者および合格者が非常に多いほうなのですが、周囲に受験された人がいるという話を聞いたことはありましたか。
黒羽
それまではあまり聞きませんでした。
受験することになって初めて、過去に受けた人がいることを知りました。今回も同じ部署から私以外にも何人か受験しています。
ちなみに、受験を薦めた上司の方からは、CPE資格について具体的な説明などありましたか?
黒羽 「みんなが受けているから、受けないか」と言われただけでした(笑)。
それがどんな試験で、どんな準備が必要という説明は、特になかったのでしょうか。
黒羽
「細かいところはガイダンスっぽいのがあるから、それを聞くように」という感じです。
それで、送られてきた教材を見て(ガイドの厚さを見て)「本当にこれを全部覚えるの?」という感じでした。正直ボリュームの多さにびっくりしました。
きっかけはどうあれ、そこから前向きに取り組んだ結果がこのたびの最高得点での合格だったかと思います。
最初に教材が届いてから合格するまでの間、どのようなお考えを持って取り組まれたのでしょうか。
黒羽
教材は生産技術者向けで、製造現場で使われるような内容です。
私の仕事は現場の人がどんな業務をしているのかを把握し、それに見合う機能要件を決めるところから始まるのですが、残念ながら私には現場の経験が十分にありません。
それまでは、これまで関わってきた中で得た多少の経験値をもとにして、現場の人とはやり取りをしていました。
ところが、教材を読み込むと現場の人が話していたことの意味がすっと入ってきます。
過去に聞いてきた話が目の前の現実につながっていくわけです。
これは現在の業務に使える内容だと感じました。
現在担当している工場の統合において、仕組みを統合していくということは従来のやり方を変えていかなければなりません。統合していくという方向で現場の人を説得する際、反論されると、ベースとなる知識や経験がどうしても不十分なため、うまく説得できないこともありました。
しかし、CPEガイドのような基本的な教科書があれば、説得力を増すことができます。
だから、標準化作業にも十分使えるという印象を持ったのです。
私の中で不足していた部分を補うこともできたので、単に覚えるだけでなく、興味を持ちながら読んでいくことができました。
「これは日常の業務に使える」と感じ、非常に前向きに学習することができたわけですね。
黒羽 そうでないと、恐らくそんなに勉強がはかどらなかったと思います。
合格される方はたくさんいらっしゃいますが、最高得点は常にトップの1人か数人だけです。
他の受験者とは勉強法のどこが違うのか、私ども事務局も含めて、多くの人が気になるところです。
黒羽
社内では、前回の受験者から試験の出題ポイントについて簡単なガイダンスを受けました。
そのおかげで学習方法が私にも分かりましたので、そういった意味では組織的に共有されている有効な情報に助けられた部分はあったと思います。
そこは非常に大きいですね。
ただ、最後はご自身が1人で受験するわけですから、ご自身の中できちんと目標を立てて取り組まれるのか、そうでないのかで大きな差が出るのではないでしょうか。
これはCPE資格に限った話ではありませんが、試験の難易度とは別に結果を左右する要素だと考えています。
組織的にはリレーのような感じで声がかかったとうかがいましたが、内容はご自身が担当する仕事に有益と判断されたという話を伺いました。
黒羽
そうですね。組織としてCPE試験を受けるように勧めているのは、現場へ行って仕事をする以上、CPE程度の知識ベースがなければいけないと会社が考えているからでしょう。
当然、現場ではプロとプロの戦いが待ち構えていますからね。個人としてだけでなく、組織としても必要なことだと思います。
そこがうまく循環しているという印象を持ちました。
実際に先に受験した方からアドバイスがあったようですが、ご自身の取り組みとしてどんな感じで学習されたのでしょうか。
また、少し苦労した部分などがありましたら、お話をうかがいたいのですが。
黒羽
まずテキストをいただき、ガイダンスで出題されそうなポイントを教えてもらいました。
教えていただいた個所をまず読み込みます。それからは各自の自習になります。
通り一辺倒にひと通りテキストを眺めます。
その中で自分がポイントと感じた部分を1つずつ書きだしていきます。ひと通り読んでまず、概略を頭に入れます。
それでも記憶をしなければいけませんから、1つずつ書き出していきました。なかなか記憶できないというか、記憶力が衰えていますからね。この作業で週末を何回かつぶしました。
時間にしたら2、3時間ですが、私は集中力がないものですから、それくらいしないと覚えることは難しかったです。
(ご自身の学習計画カレンダーには)ちゃんと時間も書き込んでいるのですね。
黒羽 一応50時間は勉強しないと合格しないといわれていましたから、そこはきちんと配分していました。
テキストが手元に届いた時期はいつごろでしたか。
黒羽 6月の頭ぐらいです。そこからスタートしました。
6月に26時間以上も費やしたのですね。
黒羽
6月はそうです。7月も同じくらいやりました。
ノルマ達成のために試験日も朝早く起きてやりましたよ。
単語帳も作ったのですか。
黒羽 単語帳は作りました。これはレクチャーで出てきたことですが、テキストを順に読んで覚えていくだけでは辛いので、言葉を1つずつ理解しながら進められるようにしたのです。
単語帳の作成やテキストと照合して覚えていく作業は自宅でやったのですか。
黒羽
集中力が続かず、時間がなかなか取れませんでした。週末に頑張ろうと考えていても、あまりできないこともありますから、平日に取り返さないといけません。
そこで、会社の昼休みや通勤中などに時間をひねり出して単語帳を見ていました。
すごいですね、家庭ではどうしていましたか。
黒羽
週末に半日部屋にこもっていたぐらいです。
家族には「誰も部屋に入ってくるな」とはいいましたが(笑)。
でもそれくらいでだいじょうぶでした。
お1人の時間を確保したわけですね。実際に手を動かすとともに、意図的にまとまった時間を確保したことが大きかったのではないかと思います。
逆に、苦労した点はあったのでしょうか。時間との戦いや通常の業務との関係で苦労した点などはどうですか。
黒羽
やはり現場経験がないので、概略は読んでいくと何となく分かりましたが、初めて見る単語も出てきます。
現場経験が十分で自分の経験値と合致すればよく分かるのでしょうが、経験も知識もないと理解がなかなか難しいですね。
特に設備の発注のところが難しかったです。
また安全のところなどは知識がないので、逆に新鮮な目で見ることができました。
現場に近い安全管理の辺りですね。
黒羽
そうです。でも、本当に1から覚えていくのは大変でした。
情報システムのところはすっと入ってきましたが、それはガイドの2章にしか出てきません。とにかく、知識も経験も全くない部分を理解して覚えるのに苦労しました。
貴社のように、大きい会社になると、現場の人に話を聞くのもなかなかできないものでしょうか。
黒羽
現場に行くと業務をどうやっているのかを聞かなければなりません。
ITを担当する前は生産革新活動をしていましたから、現場の人といっしょに改善活動をした経験も持っています。
現場で話を聞くことがゼロというわけではないのです。
しかし、本当に仕事として現場に入り、日々の業務をこなしたわけではありません。
そういう意味では表面的な知識しか持っていません。
そこを集中力と学習量でカバーされ、見事合格されたわけですが、試験を終えて手ごたえはありましたか。
黒羽
合格したとは思いました。
合格ラインはだいたい、6割から7割といわれていましたから、多分だいじょうぶだろうと感じていました。
ただ、それだけで、自分が平均よりも点数が高いのか、低いのかは分かりません。
一緒に受けた同僚には結果について聞いてみましたが、同じくらいの点でしたので、団子状態だと思っていました。
今回のインタビューは最高得点者ということで、黒羽様にお話しを伺いました。
黒羽 それでびっくりしました。何か悪いことをしたような感じで…もちろん何もしていないのですが(笑)。
まさか自分がという感じでしょうか。
黒羽
そうです、そこは本当にびっくりです。
CPE資格は問題集もないので、満点を取る人などいるのでしょうか。逆に聞きたいですよ。
満点はなかなか難しいように思います。
黒羽
振り返ると、どんな問題が出るのか分からないので、苦労しました。
試験のイメージが浮かばないのです。
ウェブ上にいくつか、模擬試験がありましたが、ちょっと不安でした。
会社に過去の蓄積があり、大まかに話を聞いてはいたといえそのような状況でした。
テキストのボリュームが大きいだけに、どこから出るのかがつかみにくいですよね。
黒羽
いくら覚えてもキリがない感じです。
問題集がないので、合格ラインに来たという実感もわきません。
普通なら模擬試験で何点取れたか分かるでしょう。
勉強してみてこれならだいじょうぶという当たりをつけられますが、この試験はそれがありません。
そこが大変でした。
実際に結果が出て合格したうえ、最高点でした。
今思い返してどこが良かったのでしょうか。
黒羽
まじめにやってきたということに尽きると思います。
プレッシャーも結構ありましたので、本当にまじめにやったのです。
「今までうちの部で落ちた奴がいない」という言葉が最も効きました。
自分が落ちたら第1号になると思い、それがプレッシャーを生んだようです。
プレッシャーというよりも、モチベーションという方が正確かもしれません。
晴れて資格の所有者になったわけですが、これからこの資格取得で得た知識を日常の業務でどう生かしていくつもりですか。
黒羽
今後もITの導入は続いていきます。
幅広い課題がきっと、浮かび上がってくることでしょう。
問題は現場だけでなく、受注から生産計画、製造にも見られます。
今回の資格の勉強でいろいろな課題に対し、対応するためのベースを学ぶことができたと感じています。
うまい言葉が出ませんが、知識やテキストを活用し、いっそういいものを作ることができそうに感じています。
あと、どう使うかというより、これからどうしていかないといけないかという課題が2点あります。
当社としてはグローバルにどんどん生産を拡大していかないといけません。
ITの導入も進んでいくでしょう。
国内向けに強化しておきたい知識が海外に適用できるのか、海外向けに何か違うものが必要になるのかを見極めなければいけないことが1点目です。
また、インダストリー4.0やIoTとかいわれていますが、今後の新しい潮流が出現する中、何をすればいいのかを模索する、これが2点目です。
テキストも新しい章が増えるのかどうか分かりませんが、改訂版が出るのであれば、見てみたい気がします。もう1度、試験を受けるのはごめんですが(笑)。
1ついい忘れたことがあります。
社内だけでなく、社外の人とも日本のものづくりをどうするかという活動をしているのですが、NECの中にいると自分たちのやり方がローカルなのか、標準なのか分からなくなることがあります。
ある意味、井の中の蛙みたいなところがあるのです。一般的に見てどんな差があるのかは、ガイドを読んだり、社外の人と接したりしないと、よく分かりません。
私は社外の人と会う機会があり、そういうギャップが見えてきました。
CPEガイドは社外の人と会う機会のない人の物差しとして使えるように思います。
最初のお話で現在の担当が工場の統合だとうかがいました。
私ども、日本能率協会において、企業の課題を耳にする機会が多いのですが、工場の老朽化は全国的な特徴のようです。
その一方で、自動化やIoTの導入など新しい流れが来ています。
ちょうどそんなタイミングにあり、役員クラスの方は中長期計画の中でいったい、どんな課題を盛り込んでいけばいいのか、悩みが多いと聞きます。
これまでと違う状況ですから、目標の立て方自体に頭を痛めているようです。
そのような相談が結構増え、さぞ苦労しているのだと感じていたのですが、やはり仕組みやプロセスを見直して統合することは大変ですか。
黒羽
新しいことに着手しようとすると、現場からはどうしても疑問や不満も出てきます。
やはり簡単ではありません。
誰もが今までのやり方を変えるのは嫌でしょう。
そこからスタートするわけで、大変なのです。
われわれとしてはあるべき姿を示し、現場の人の作業も良くしていくことを粘り強く説明するしかありません。
現在のそのような大変な業務の中でCPE資格が役立ってくれることを願っています。
黒羽さんは会社の勧めで受験し、前向きに取り組んで結果を出した見本のような方だと考えていますが、実際に合格しなかった方もたくさんいますし、日々の忙しさで資格に手を出すことをためらう人も少なくないでしょう。
最後にそういう方々へメッセージをいただけますでしょうか。
黒羽
上からものをいうようなことはできませんが…
これまでの業務を経験の積み上げで進めてきた人でも、テキストから体系立った知識を得ることで自分の頭の中が整理されるでしょう。
自分のどこが不足しているのか、生産技術の仕事をどこまで広げればいいのかなど教えてくれ、きっと視野が広がるはずです。
今までの自分を脱却し、それまでの経験をさらに生かすきっかけになるのではないでしょうか。
私はそうなりました。すごく役にも立ちました。
私のような年寄りが受かったのですから、若い人ならまじめにやればだいじょうぶですよ(笑)。
メッセージ、しかと受け止めました。
本日はどうもありがとうございました。