2021年3月25日
堀場製作所 生産本部 生産技術部 生産技術チーム 志村 美代子様にCPE資格(CPE-B級、CPE-A級)の資格取得者インタビューを行いました。
生産本部 生産技術部 生産技術チーム 志村 美代子 様
左から 生産技術部 志村様、鈴木様、小杉様、部長 倉橋様
※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時
志村 私は京都本社の生産本部 生産技術部に所属しております。
業務内容としては、一つ目に、社内設備の設計~導入~評価まで一連の業務を担当しています。
二つ目は、QCD向上の観点から最適な生産が出来るよう治工具やプロセスの設計・改善を行うことです。最近では3次元CADを用いた設備設計と、設備評価の報告書作成や設備バリデーションに携わる時間が多いです。
当社には自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学と大きく5つの事業部門がありまして、例えば自動車計測システム機器や、半導体製造ラインに組み込まれる各種プロセスモニタ環境分析装置、血液検査機器など多岐にわたる製品群があります。
生産技術部には各分野から日々技術相談が寄せられます。分野を限らずアドバイスを求められるので、それらに的確に対応するためのマルチスキルが要求される部署だと思います。
また、私は海外での生活経験があることから、欧州にあるグループ会社との業務を担当しました。
グローバル生産対応ということで調達に関連した業務でしたので、資材・物流などの知識も併せて必要となりました。
その際に、改めて生産技術は奥深い仕事だと感じましたので、知識をブラッシュアップする必要性を感じていました。
志村 本社と同じ京都府下の高専の機械工学科を卒業しました。新卒で入社して、新製品の製品化設計の部署に配属されました。
主として環境計測分野の設計に従事し、微小粒子状物質(PM2.5)計測機器などに携わりました。
製品開発プロセスの面では、現在私がいる生産技術部より上流工程にあたる部分を最初に経験しました。
その後に配属されたのが生産技術部です。当初は、ベテラン技術者ではない自分が現場に貢献出来るのだろうかと不安を感じました。
生産技術部での初めての仕事はpHメーターで使用しているガラス電極製造の一部の作業を自動化することでした。実際に携わってみると、生産技術では成果がダイレクトに見えるのでクリエイティブで面白いと感じました。
学生時代から生産技術者になることを第一に夢見て会社に就職する人は少ないのではないかと思います。私自身も学生時代には生産技術者のことをほとんど知りませんでした。
生産技術者がカバーする業務範囲が広いのでイメージがつかみにくいですが、逆にいえば、テキストにあるように「上流工程と下流工程のブリッジパーソン」となれることは、非常にやりがいがあると思います。
志村 最初のCPE B級受験のきっかけとしては、異動した先の生産技術部でCPE試験制度を紹介してもらったことです。
当時の生産技術部長が「生産技術者として対外的に通用する幅広い知見を身に着けてほしい」というおもいを持って組織として取り組むことを決定したそうです。CPE試験制度が始まった当初からテキストを複数セットで購入しています。
多くの方が抱くであろう「生産技術者とは一体なんぞや?」という疑問に対しては、テキストの中でしっかりプロトコルとしてまとめて頂いているので、有難く感じました。
当時はまだCPE試験が始まったばかりで合格者が社内にいませんでしたので、部員数人で情報交換しながら同時期に受験し始めたことがきっかけです。
志村
当社ではBJ(ブラックジャック)活動という改善活動を行っています。
私の入社当時は、実際のモノが開発から出てこないと、下流に仕事が落ちてこないという待ちの姿勢になりがちなところに課題がありました。
CPE B級の勉強をしているときにテキストの中で「コンカレントエンジニアリング」という言葉を見つけたのがきっかけで、これだ!と思い改善活動に取り組むことにしました。
生産技術に3次元CADを導入し、製品の開発段階から前のめりで提案型の設備や生産改善をしていこうと呼びかけ、設備製作のプロセスを変えました。その結果、社長より賞を頂きました。
今ではすっかりコンカレントエンジニアリングは当たり前のことになりましたが、テキストの基本に立ち返って考えるのが大切だということはそのときの学びです。
今年は、部内の設備製作や試作の進捗管理の手法を大きく改善しました。
生産技術部では個々人のスキルに応じて様々な部署から依頼された業務を同時並行で遂行していきますが、なかなか他の部員の業務状況をリアルタイムで共有できていませんでした。
年々と勤務の形態や働く場所がフレキシブルになってきていますので、互いのことが把握できないと組織的な相互不信感やストレスにつながります。
業務内容と進捗を具体的な数値で見える化して、部員全員が常に状況を共有できるようにしています。
組織の管理手法やモチベーション理論についてはテキストの「生産技術部門の機能強化」の箇所からエッセンスを盛り込みました。
生産技術はモノの動きを見ることはもちろん、人や組織づくりの観点も同じく大切なのだと気づきました。
志村 一つ目に、隙間時間の有効活用です。
私には小学校低学年と保育園の子供がいるので、まとまった勉強時間の確保が一番のネックでした。
お茶を沸かしながらなど細々とした家事をしながら、空き時間が出来たときにCPEテキストを読み進めました。
通勤中も良い勉強時間になりました。通勤バスが渋滞で遅れても、勉強時間に出来る!という風にポジティブに考えるようにしていました。
A級に関しては40時間程度勉強をしました。実務経験の内容や年数などでもベースの知識が大きく変わってくると思うので、時間数は参考程度です。
二つ目に、社内に勉強仲間を作ること。これはとても大事です。
普段の業務に追われる中で試験勉強に対するモチベーションを維持することが難しい局面があるかと思います。同じ部内やチーム内で仲間を作って一緒に受験するのがおすすめです。
幸いにも、弊社では生産技術部内でCPE勉強会を開催していましたので、受験者同士で情報共有を進めながら楽しく取り組むことができました。
私と同じチームでベテラン技術者の鈴木がCPE勉強会の先生役を担っています。
若手技術者への技術やノウハウ伝承については課題感があったことから、CPEテキストを活用することになったそうです。とても頼りになる先生で、テキストの内容を豊富な実務経験と絡めながら説明してもらえました。
志村 B級(当時CPE試験)を取得していたことで、しばらくの間自分の中では満足しており、平常業務以外で新しく学び直すということが中々出来ていなかったように思います。
大きなきっかけとしては、2020年に入ってCOVID-19の影響から在宅で勤務をする機会ができたことです。(当社ではGood Place勤務制度と呼んでいます。)
生産技術者は工場でなければ仕事が出来ないと思っていましたが、自分の業務には実験報告書作成などデスクワークが一定量あるので、工場でやるべきことと在宅でできることをしっかり分類し、計画することで、業務にメリハリをつけることができました。混雑した通勤電車やバスを使わなかったことで時間的・体力的な余裕を感じました。
体力に余裕が出来ると気力も充実するのか、何か新しいことを始めてみようという気持ちになりました。そこで自分の中の未達事項だったCPE A級試験に取り組むことにしました。
海外工場と業務をしたことから、工場全体やグローバルなオペレーションに関する知識を補完したかったのです。
部長に相談したところ、チャレンジを推奨するということで生産技術部から受験料などの支援をしてもらえたので、頑張ってみようということで自分の目標設定に追加しました。
せっかく支援して頂く限りはやり抜かなくてはと思い、これが良いプレッシャーになりました。
志村
A級は生産技術者としての判断を問われるケース問題が多いので、B級とは違ってセミナーや予想問題だけで知識を補完するのは難しいと思いました。
B級については、社内でも年々と受験者が少しずつ増えて情報の蓄積が進んでいるのですが、A級は情報が少ないです。そういった点では難易度が高いと思います。
試験レベルが予想できなかったので、試験範囲のテキストを何度も何度も読み込みました。
スマートな学習法ではありませんが、振り返ってみればA級対策としてはそれが一番良かったのではないかと思います。周囲にいるA級保持者も同じことを言っていました。
それから、HPからダウンロードできる「生産技術マネジメント用語集」も非常に役立ちました。
試験は終わりましたが、用語集は今でも辞書として活用しています。
私個人としては、B級の方が生産技術に関する知識の暗記量と正確さがシビアに問われる試験であると感じました。
世間で一般的に用いられる生産や品質管理の手法などを正確に覚え、徹底的に「型」を学ぶ感じです。
このようなインプットの時期も必要だと思います。
主に知識のインプットを問うのがB級、アウトプットを問うのがA級という感じで試験が作られていて、テキストの内容がA級B級二つの試験を通して有機的につながるのでバランスがとれていると感じました。
志村 弊社の生産技術部の年間教育計画の中に、CPE試験テキストを活用した勉強会が盛り込まれています。私は部内でCPE試験勉強会の事務局の一員となっています。
今のところ、対象者の年次(入社◯年目など)に決まりは無く、新たに生産技術部に異動してきた人を中心に勉強会に参加してもらうことになっています。
生産技術部では個々人のマルチスキル化が目標の一つとなっていて、生産現場だけでなくICT部門や資材、物流など色々な職場との人財交流が行われていますが、他部署から異動してきた際に、スピーディに体系だった知識を身に着けることに課題感があるという声がありました。
そのためにはCPE試験の活用が良いのではないかという意見が出て、現在に至ります。
世間的にも人的流動性が高まり、テキストにあるように「生産技術を知らない生産技術者が増加」している中で、CPE B級は生産技術で5~10年のキャリアを持つことという要件が公式にはありますが、年数が原因でB級受験のハードルが高く感じられるかも知れません。
生産に関わる者がスタート地点で習得しておくべき内容として、資格を位置づけることも良いかなと思いました。そうなれば他部門(生産、資材…)からも受験者が増えると思います。
志村 CPE試験のA級・B級を経て、今後はこの経験で得た知識をもとにしたアウトプットが求められています。要求仕様通りのことを実現するだけでなく、生産技術者としてものづくりの上流を考えながら設備導入などを提案できるようになっていきたいです。CPEで学んだ図表は積極的に活用していきます。
今後、他の海外工場との連携に携わっていくことも目標の一つです。長期的な統計を引用すると(※)、日本ではおおよそ40年後(2065年)の労働人口が現在より4割減少すると予測されているそうです。工場運営のためには、生産性向上が「必要」というより「しないと成り立たない」ようになっていくので、将来的に生産技術が果たす役割はまだまだ大きくなると思います。
長年かけて現場で叩き上げの熟練技術者を育てることはもちろん大切ですが、一方で、作業員が交代しても作業にばらつきが出ないように標準化や簡略化を推進したり、作業を機械に任せていくことがより重要になると思います。
加えて、私自身も育児をしながら働いていますが、労働人口減少が進む中で様々なバックグラウンドを持つ人員の労働参加率を向上し、いかにモチベーションを引き出しつつフレキシブルな生産体制を作っていくかについて生産技術で得た知見を基に研究していきたいと思います。
(※)https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl170531.pdf