企業インタビュー

日立建機 インタビュー

2024年10月3日

建設機械メーカーとして世界的に事業を展開する日立建機。同社の生産技術部門では、スキルの可視化と育成を目的に、2023年度よりCPE資格の本格導入を開始した。導入を主導した企画担当者と、実際に受験・合格した現場技術者たちに、導入の背景と現場での変化、そして今後の展望を伺いました。

生産技術統括部 組立グループ 柴田 祥吾 様

生産技術統括部 龍ケ崎合理化グループ 杉野 宏樹 様

機器生産技術部 合理化グループ 松本 隼門 様

生産技術統括部 企画部 佐々倉 高志 様(推進担当者)

※以降敬称略、所属・役職はインタビュー当時

日立建機 インタビュー
目次

【現場からの挑戦】
CPE資格が変えた、日立建機の技術者たちの視野と実践力

生産技術部門の役割とCPEとの接点

貴社における生産技術部門の役割と、CPE導入に関連する業務上の課題について教えてください。

佐々倉 当社の生産技術部門では、組立・加工・溶接といった各工程の設計や設備導入、改善までを幅広く担っています。私はその中で人財育成を担当しており、以前は部署ごとにバラバラだったスキルマップの共通化に取り組んできました。そのなかで出会ったのが、CPEのスキルスタンダードです。

柴田 中型油圧ショベルの組立ラインを担当しています。調達部門での経験もあり、部門間で技術の考え方が違うことに課題を感じていましたので、CPEのようにスキルを共通の言葉で捉えられる仕組みには期待が持てました。

杉野 ホイールローダの溶接ラインやロボット導入を担当しています。現場では経験がものを言う場面が多いので、体系立てて学べる機会が少なく、CPEには大きな価値を感じました。

松本 機械加工の工程設計・設備導入を担当しています。長年の経験をどう次世代に伝えるかは常に悩んできたテーマで、CPEはその言語化を助けてくれる仕組みだと思っています。

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導入判断の背景とそれぞれの受験動機

CPE導入の経緯と、それぞれが受験を決めた理由を教えてください。

佐々倉 部門横断のスキルマップを整備するにあたり、CPEのスキルスタンダードが非常に有効だと判断しました。当初は参考資料として活用していましたが、スキル向上の手段としても有効と感じ、2023年度から資格制度として本格導入しました。

柴田 以前からCPEを知っていましたが、受験のタイミングがなく見送っていました。制度として導入されたことで、良い機会だと思い挑戦しました。

杉野 上司の勧めで初めて知り、学ぶ内容を見て「自分の仕事を体系的に見直すチャンスだ」と思い受験を決意しました。

松本 同僚が受験していたことで興味を持ち、自分も挑戦しました。部署内でも受験の空気が生まれていたことが後押しになりました。

日立建機 インタビュー

学習の工夫と試験で得た気づき

CPEの学習や試験を通して、どのような工夫や気づきがありましたか?

柴田 通勤時間を利用して、毎日40分ほどテキストを読み込んでいました。一冊ずつ攻略していくスタイルで、平日の積み重ねを重視しました。設問はどれも選択肢が紛らわしく、二択までは絞れるのに「残りの1/2」で悩む問題が多かったです。自分の思い込みと一般的な知識とのズレに気づかされました。

松本 家庭と仕事の合間を縫って、子どもの昼寝時間などを活用して学習しました。感覚的に理解していたことを体系的に整理し直すことができ、理解が浅かった部分に気づけたのは大きな収穫です。

杉野 私は、1冊ずつテキストを集中して読む方法で勉強しました。流れをつかむことを意識して読み進めました。CPEの試験は単なる暗記ではなく、内容理解と応用力が求められると実感しました。

佐々倉 企画部では、受験者に向けたガイダンスを実施しています。合格者の声や勉強時間の目安である40時間程度を共有するなど、安心して学習を進められる環境づくりを重視しています。

日立建機 インタビュー

資格取得がもたらした変化と実務活用

CPEの取得によって、どのような変化や業務への効果がありましたか?

杉野 溶接に特化していた視点が、製造全体へと広がりました。たとえば、前後工程や周辺設備との連動を考慮してライン設計ができるようになり、異なる部署との議論の質も変わりました。「なぜこの仕様にするか」をCPEのロジックで説明できる場面が増え、信頼にもつながっています。

松本 私は設備投資やレイアウト変更を担当していますが、CPEの知識をベースに、複数部署の要件を踏まえた設計提案がしやすくなりました。たとえば工場再編において、CPEで学んだ「設備配置の最適化」「歩留まり向上」「人員配置と作業負荷のバランス」といった視点が、実践に直結しています。

柴田 CPE導入前は、プロジェクトの初動で迷うことが多かったです。しかし今は、「どの順番で段階を踏むか」「何を最初に確認すべきか」が明確になり、設計〜導入〜評価までスムーズに流れています。また、幹部報告やデザインレビューでも、CPEの体系を軸に構成すれば論点が整理され、フィードバックの受け止め方にも余裕が出てきました。

日立建機 インタビュー

CPEを活かした育成と広がり

今後、CPEをどのように活用し、社内で展開していきたいですか?

佐々倉 CPEは当社にとって、単なる資格制度ではなく「共通のスキル言語」です。係長クラスがマネジメントに進む前に受験しておくことで、部門間の調整や教育係の業務にも活かせるようになります。スキルマップと連動した人財育成の骨組みとして、制度全体の核になりつつあります。

松本 若手に対しても、CPE的な考え方を早いうちにインストールしておくべきだと思っています。業務で「とりあえずやる」ではなく、「なぜそうするのか」「他に選択肢はあるのか」を考えられるようになることが、将来的な設計力や改善力につながります。

柴田 今では、後輩からの質問に対しても「それはCPEのこの章にある視点で考えるといい」とアドバイスできるようになりました。CPEで得た体系的知識が、自然と他者育成にも役立っています。

杉野受験者が増えたことで、部署をまたいだ学びの連鎖が始まりつつあります。私も自分の使っていたテキストを次の受験者に譲り、「ここを押さえておくといいよ」とアドバイスを伝えるようにしています。こうした横展開の動きが、今後の全社的な定着につながるはずです。