「安全第一」は生産性を向上させるキーワード(CPEコラム12)
私たちは日常生活において、「安全」と「危険」の間に存在する「不安(不完全な安全)」な状態に置かれています。
企業の生産活動でも同じことがいえます。
この「不安」を取りのぞくのが、「安全管理」という考え方です。
「安全管理」を正しく行えば、労働災害を未然に防止し、災害時に最善の処置が行えるようになります。
そこで今回は、企業の信用を左右するといっても過言ではない「安全管理」について考えてみましょう。
「安全第一」が生まれた背景
どのような時代であっても、企業活動の中で安全確保と労働災害の回避は、企業が担う大きな社会的責任です。万が一にも事故・災害・公害が起きれば、企業はその責任を問われ、今まで培ってきた信用を失墜させてしまいます。
生産現場で「安全第一」といった標語をよく目にしますが、果たして意味は正しく理解されているでしょうか。
1906年、U.S.スチール社(米)のゲーリー社長は、不景気のために設備が荒廃し、労働者の災害が多発している状態を見て、
「安全第一、品質第二、生産第三」
を社是に掲げました。
これを徹底したところ、災害の発生件数は減少し、同時に製品の品質や生産性も向上しました。
なぜそのようなことが実現できたのでしょうか。
それまでは、整備の行き届かない設備などにより、労働者が落ち着いて作業できる環境ではありませんでした。
しかし、「安全第一」の標語のもとで安全管理を行ったことで、労働者が安心して作業できる環境が生まれ、結果として品質も生産性も改善されたのです。
重大災害が起こる前に~ハインリッヒの法則~
もう一つ、安全管理を考える際に、「ハインリッヒの法則」を正しく理解することが非常に重要になります。
これは、同じ人間が同じ種類の災害を起こした場合、330件のうち300件は無災害、29件は微小災害、残りの1件が重大災害になるという研究結果のことです。
死亡事故が増加している職場の多くは、「ハインリッヒの法則」に反して、職場の危険度を知る重要な情報である無災害や微小災害が軽視されてしまっています。
例えば、危うくケガをするところだった(無災害)、うっかり足に切り傷を負ってしまった(微小災害)などは、危険を示すシグナルです。
これを放置して業務を継続した結果、ついに重傷・死亡といった重大災害が起きてしまいます。
安全管理が行われていない典型的な「管理不在」の状態といえるでしょう。
予防保全と安全管理が大切です
労働災害の大半は、「はさまれ・巻き込まれ」などの機械に関わる災害です。
発生件数は低下するどころか、毎年多くの労働者が負傷しているのが現状です。
災害発生時に再発防止策を行っても限界があります。
機械設備の安全性を確保し、点検・保全の態勢を整えること、すなわちしっかりと安全管理を行うことが、災害発生の件数の現象には不可欠なのです。