原価管理が抱える問題を洗い直してみよう(CPEコラム8)
前回は、製品の原価を算出して、
仕上がった製品の原価を把握する「原価企画」について考えました。
これをさらに進めて、原価の違いがなぜ生じたのかを分析し、改善の手を打つという一連のサイクルを「原価管理」と呼びます。
今回は、この「原価管理」の問題点を検証してみましょう。
原価管理に潜む問題点
そもそも、「原価管理」は企業にとって基幹業務であり、制度も手順も確立されています。
しかし実際の業務では、以下のようなさまざまな困難を感じることがあるのではないでしょうか。
1) 量産以後の差異(試作と量産、原価企画で設定した内容との)への対策が難しい
2) 実績把握のタイミングが遅れる
3) 原価低減の先行きが見えない
4) 正しい実績把握ができていない
5) 原価計算基準(配賦基準)が実質的ではない
6) 原価計算だけで満足してしまう
7) 現場の活動の成果が原価に反映しづらい
例えば1)のように、量産段階になってから原価の差異が判明すると、設計・工程・治工具の変更が必要となり、期間やコストの面から改善対策が難しくなりがちです。
量産に移る前に、原価の差異を把握する必要性が大きいのがわかるでしょう。
2)の実績把握の遅れは、原価関係の情報システムが旧式だったり、非効率だったりという理由が挙げられます。
しかし実績把握が遅くなればなるほど、対策が遅れてしまうのは必然ですので、システム全体を刷新できなくても、効率をあげるような業務の見直しが求められます。
なお、6)のように原価計算をすることだけで満足してしまうことも、実績の把握が遅れてしまう要因に挙げられます。
そもそも実績の把握は、作業者から上がってくる数値報告が頼りです。
そのためには、現場で作業自体の効率性を求められている作業者が、実績報告という事務作業を苦に感じない仕組みを作り上げ、4)のような正確な実績が把握できないというトラブルを回避しましょう。
また、材料費の全体はわかっているのに、明細が不明確な場合にも、同様のトラブルが生じることがあります。
5)に挙げた原価計算基準は配賦基準とも言います。
この基準の見直しを怠っていると、どんなに改善対策を行っても変動費が減らず、逆に原価が上がってしまうという事態にもつながります。
原価削減のチャンスを逃してしまう要因ですので、原価計算基準はつねに見直すよう心がけましょう。
このように、原価に係わる問題全体をしっかりととらえて対策を講じる能力が、生産技術者に求められているのです。