海外の工場から、日本人技術者が帰国できない2つの理由(CPEコラム3)
海外工場立ち上げ時の2つの問題
今回は、海外の工場で生じる問題と、その原因を考えてみましょう。
例えば、
海外工場の立ち上げで派遣された日本人技術者が、予定を過ぎても帰国できない。
日本人技術者が帰国した途端に、現地工場のラインがストップしてしまった。
想定外の設備トラブルで、交換パーツが準備されていなかった。
などなど。
これらは海外工場の立ち上げの際によく耳にする話で、原因として大きく分けて2つの「問題」に分けられます。
ひとつは「工場運営における問題」です。
日本人マネジャーと現地技術者の「コミュニケーション」がうまくいかないために、予想もしない結果となる場合が多々あります。
日本と海外では環境がまったく異なることを理解し、「これはわかっているだろう」と中途半端な指示ではなく、「細かく指示を出す」のを心がけましょう。
また、本社からの「投資回収の短期化」の要求が壁となることもあります。
生産技術はPDCAをくり返し、経験を重ねて生み出されます。
しかし海外進出の投資回収を急かされると、技術者を育成する余裕がなくなります。
設備のメンテナンスやトラブルに現地技術者が対応できないのは、
育成がしっかりと行われていないせいです。
結果、日本人技術者がいつまでも帰国できないという事態に陥ります。
腰を据えて、基本からしっかり現地技術者を育成することが、重要なポイントとなります。
もうひとつは、「生産技術部門における問題」です。
QCDに関するトラブルの多くが、現地技術者の技術力を無視したライン設計をし、対応できないような設備を導入した側の責任とも言えます。
現地技術者の育成の遅れが、ここでも問題として浮かび上がります。
現地調達したパーツの品質が良くない、設備の一部の納期が間に合わないといったトラブルもよくあることです。
パーツの試作品と量産品は、それぞれ異なるラインで製造されます。
そのため、試作品は問題がなくても、量産品で不具合が発生する事態が起こりうるのです。
納期に関しては、以前、現地企業側が値上げ交渉の手段として利用したことがありました。
現在はかなり改善されているとはいえ、海外にはいろいろな企業があります。
新しい調達先や協力企業を探す場合には、このようなリスクもあり得ることを念頭に置くべきです。
生産技術者の役割
これらの問題を改善して、海外工場で起きるトラブルをできるだけ減少させるのが生産技術者の役割でもあります。